NF亭ショウタです。
ロート製薬が、メタバース開発を発表しました。
まだまだ詳細な情報は明かされていませんが、運営戦略の幅が広がることは確実です。
ロート製薬は、2018年より公式VTuberを運営しています。
これから、「メタバース×VTuber」が、多種多様の大企業の定番戦略となっていく可能性が高いです。
この記事では、「ロート製薬メタバース×企業系VTuber」の
- 全体像
- 可能な運営戦略
- 未来予測
…を解説していきます。
ロートバーチャルラボとは
ロート製薬のメタバース?
ロート製薬株式会社は、2022年6月13日に「ロートバーチャルラボ」の運営を発表しました。
ロートバーチャルラボは、健康に関する情報発信・交流拠点としての活用を目的としており、
- VTuber同士の交流スペース
- YouTube動画の配信部屋
- 商品展示エントランス
…などの設備があります。
ロート製薬公式VTuber(後述します)のコラボ配信や、お客さんとのコミュニケーションの場として活用されるそうです。
ロート製薬とは?
1899年に創業したロート製薬(当時の名称:ロート目薬)は、胃腸薬の製造販売から事業を開始しました。
その後、1975年くらいからスキンケア商品も製造を開始しました
1988年には、アメリカのメンソレータム社の買収をした後、アジアを中心として、各国に事業展開しています。
これらの国で、
- 化粧品
- 皮膚要約
- 目薬
- 胃腸薬
…などの製薬を扱っています。
ロート製薬の売上の比率は、
- アイケア関連・21.6%(国内シェア約40%)
- スキンケア関連・62.1%
- 内服薬 関連・12.8%
- その他・3.4%
…となっています。
引用元:公式サイト
ロート製薬公式VTuber:根羽清ココロとは?
2018年6月10日の「ロートの日」に活動を開始した、ロート製薬公式VTuberです。
同社のスキンケア製品開発部兼広報・CSV推進部に所属しているリアル社員であり、同時にVTuberとして活動をしています。
ロート製薬の商品宣伝というよりは、一般層も楽しみやすい娯楽性の高い
- 短尺動画
- 歌動画
- ゲーム配信
- 雑談配信
…などの発信をしています。
テンションも編集クオリティも高いので、スキンケアや健康食品などに興味がない人でも、楽しめる内容になっています。
企業系VTuberの中でも、早い段階から活動開始したVTuberといえるでしょう。
製薬業界で、メタバース運営が進んでいる
メタバースが注目された2021年9月以降、メタバース運営を始める製薬企業が増加しています。
実際の事例を紹介していきます。
メタバース運営をする製薬企業
アステラス製薬
アステラス製薬は、医療関係者とのコミュニケーション・情報提供の円滑化のために、メタバース上での研究会・講演会を試験的に実施すると、2022年1月21日、発表しました。
- Phase1「仮想空間上での研究会・講演会」
- Phase2「バーチャルとリアルの融合、オンライン・コミュニケーションの検討」
…を計画しています。
順天堂大学
医学部を中心とした6つの学部で構成される順天堂大学が、メタバースを活用した医療サービスの共同開発を開始しました。
順天堂大学と日本IBM株式会社が、実物の順天堂医院を再現した「順天堂バーチャルホスピタル」を創り、それ起点にした新サービスの提供を目指しています。
- 来院前にバーチャルで病院を体験訪問できる環境
- 治療を疑似体験
- 医療従事者や患者同士で交流できる
- 入院患者が、病院外の家族・友人と交流できる
…というメリットを構想しています。
また、「メタバース空間で、メンタルヘルス等の疾患の改善が可能か?」という検証の意図もあります。
住友ファーマ(旧称:大日本住友製薬)
2021年10月18日、住友ファーマは、アメリカのスタートアップ企業と提携して、VR空間を共同開発することを発表しました。
健康的な活動の補助を目的とした「ジェネラルウェルネス製品」や、
予防・治療・管理のための「デジタル治療(DTx)」の共同開発を行うとのことです。
両社は、アメリカでVRを活用した精神疾患患者のためのデジタル治療の開発を進めていきます。
その後、日本を含めた諸外国に拡大予定とのことです。
ツムラ
漢方薬品企業である株式会社ツムラが、AI技術を活用した「ツムラ漢方バーチャルMR」を開発しました。
(※MR=Medical Representatives(医療情報担当者)の略。
医師や薬剤師への医薬品の販売、情報伝達が主な役目。また、医療現場の情報収集をして開発担当にフィードバックするのも仕事です)
医療従事者に対しての情報提供を合理化するため、開発されました。
医療従事者が知りたい内容を選択すると、AIがプレゼンを実施します。
音声に加えて字幕が表示されるなど、場所を選ばずどこでも視聴できる利便性があります。
「医師とのコミュニケーション」という問題点の解決にメタバースが適している
コロナ影響で、収益が減少する製薬企業が増加しています。
直接的なコミュニケーションが制限され、
- 患者が、受診を控える
- 病院が、受診の受け入れを制限する
…といった対応により、患者数が激減しました。
すると、製薬を開発する企業も、新薬が売れにくくなり収益が激減します。
そんな状況下で、製薬業界のマーケティング課題は「医師とのコミュニケーション」であるといわれています。
製薬企業は、医師に自社商品を使ってもらうことが利益を上げるために重要です。
今までは、MR(営業担当的なポジション)が、多忙な医師を出待ちして、売り込みのチャンスを伺う・・・といった非効率な手法が使われてきました。
(また、MRの訪問自体を禁じている医療機関もあります。)
しかし、それらが見直されています。
- 医療従事者専門の会員制サイト
- ウェビナー(ウェブセミナー)
- オンラインで面談
…など、スキマ時間でも効率よく情報収集できるための方法が、より重要視されています。
そこで、メタバースを活用する戦略が、有効性を増しており各企業が運営戦略に取り入れているのです。
メタバース化のメリット
製薬業界での先進性アピール
製薬企業のメタバース開発は、前例はあるものの その数は少ないですし、ロート製薬の知名度というアドバンテージもあります。
有名企業であるロート製薬が、早い段階でメタバース化しておけば先進性をアピールできますし、続報があった時の情報拡散もされやすいでしょう。
他人の目を極度に気にする人も、来てくれやすい
皮膚などに関する悩みを持つ人も、メタバース空間ならば、人目を気にせず来てもらいやすいです。
アバターなので、他人の視線は気になりませんし、匿名で相談もしやすいです。
特に女性にとって、大きなメリットと言えるでしょう
手が空いた社員がスタンバイできる
本社・支社に勤務する社員が、少しの空き時間があれば、メタバースでの接客対応が可能になります。
また、メタバース内でもパソコンを使うこともできるので、極論 勤務時間中、メタバース内で作業し続けることができます。
24時間いつでもスタッフが常駐しており、無料相談可能な状況を作れば、有料の自社商品・自社サービスへの誘導もしやすくなります。
権威性
医者が白衣を着てると、その発言にも信頼性が生まれます。
これは、「白衣を着ている➡医者である➡医療に関する発言は正しい」というイメージがあるからです。
しかし、
手術してくれる執刀医が、そこらへんのコンビニにいそうなオッサンみたいな服装だったら、ものっすごく不安になると思います。
これは、普段着だと”白衣の持つ権威性”が発揮されないからです。
なので、ロートバーチャルラボは、娯楽性を排除したような外観です。
これは、「ラボ(研究室)」らしい雰囲気を出して権威性を高めたいからと思われます。
結果、メタバース利用者から、信頼感を得やすくなるのです。
メタバース化のデメリット
実際に手に取ることは出来ない
メタバースでは とうぜん、商品を手に取ることはできません。
バーチャル映像として映し出される3Dアイテムを”擬似的”に取る事はできますが、物理的に商品に触れることはできないのです。
なので、「手にとる➡カゴに入れる➡レジで会計」という流れは生まれにくいと思われます。
娯楽性が低いイメージ
VTuberが広報・案内をするメタバースにしては おカタいイメージがあります。
多くの一般層からしたら、娯楽性が低いイメージを持たれてしまい、興味を惹きにくいです。
(※しかし、これは前述した、「権威性」というメリットと表裏一体です。)
情に訴える営業活動が困難
医療従事者への新薬の売り込みの際、メタバースでは
「(営業担当の人に)何回も来てもらったから」
…などと、情に訴える売り込みが難しいです。
オンラインによるコミュニケーションはスキマ時間でできるため、情報交換が活発化します。
そのため、一回一回のコミュニケーションの心情的なありがたみが薄れていく…つまり、情に訴える営業活動は、急速に無力化していくといえるかもしれません。
可能な運営戦略
「フリー戦略」で集客
”フリー=無料”という意味です。
メタバース自体、無料なのが普通ですよね?
しかし、
「美容や、スキンケアに関する講座を、無料で受講できる」という価値があれば、それにある程度以上の興味・悩みを持つ人が集まりやすいです。
現実世界では、他の人の目が気になって、疑問点を質問したりできない人でも、
自分の素顔を晒さずにアバターとして参加できるメタバースなら、質問しやすいです。
そして、必要な人に、有料の商品を案内すればよいです。
これからのメタバースの一般普及にしたがって、集客効果も増していくでしょう。
サブチャンネルで、美容情報の無料配信
根羽清ココロさんのチャンネルは、(前述したとおり)製薬の情報に特化した内容ではなく、一般のVTuberのように
- 短尺動画
- ゲーム・雑談配信
- 歌ってみた動画
…などであり、娯楽性が高いです。
これは、商品の宣伝よりも、多くの人へのロート製薬のイメージアップが目的だからです。
商品の宣伝をすると、すでに商品に強い興味がある層しか見てくれないですが、娯楽性が高いなら、多くの人に見てもらえるメリットがあります。
しかし、同時にすでに商品に強い興味がある層には、見てもらいづらくなるデメリットがあります。
なので、サブチャンネルを開設して、そこでは娯楽性を下げて、美容・健康に関する情報を専門的に発信します。
すると、すでに強い興味がある層が視てくれやすくなります。
また、根羽清ココロさんのメインチャンネルから、サブチャンネルの存在と概要だけを伝えれば、ファンは見てくれやすいです。
すると、新しく美容・健康の情報に興味を持ってくれる人も増えていくでしょう。
- メインチャンネル(娯楽性高い・専門性低い・一般ウケ重視の内容)
⬇ - サブチャンネル(娯楽性低い・専門性高い・販促重視の内容)
…という感じですね。
(メタバースを)海外展開
いずれは、メタバースでの会話も同時翻訳されるようになります。
なので、海外の国への情報発信もしやすくなります。
ロート製薬は海外の国へも事業展開しており、それらの国でのメタバースを活用した情報発信も可能になります。
メタバースが世界で一般普及するにつれて、これから効果が高まっていくでしょう。
引用:公式サイト
企業系VTuber事務所
(前述したとおり、)ロート製薬のグループ企業は、世界中に存在します。
なので、世界各国のロート製薬支社が、それぞれVTuber運営をする・・・という戦略も可能になります。
また、
それらのVTuberが所属する「ロート製薬VTuber事務所」みたいな事務所を作れば、恐らく世界初の「企業系VTuber事務所」の事例として、情報拡散されやすくなるでしょう。
(※企業系VTuber=運営企業自体の宣伝を目的とするVTuber。後述します。)
また、日本語が話せる人を演者として優先採用すれば、コラボしやすいです。
準備に かなり手間と資金が かかるかもしれませんが、自社宣伝の広告費と考えれば、テレビ、ネット広告に対しては、かなりコスパが良い投資といえます。
未来予測:「メタバース×企業系VTuber」が王道の運営戦略になる
「企業系VTuber」とは、運営企業そのものを宣伝するVTuberです。
そして、その運営企業の商品・サービスの販売促進などを目的としています。
運営企業でリアル社員として働きつつ、広報活動としてVTuber活動をする・・・というパターンが多いです。
(※企業で運営しているVTuberはとても多いですが、それらはVTuber活動自体での利益を目的としています。
とても紛らわしいですが、「企業系VTuber」と「企業運営VTuber」は、かなり意味が異なります。)
そして、その企業系VTuberが、自社宣伝のためのメタバース運営をするというパターンが増えていくでしょう。
サントリー公式VTuberなら「水の国メタバース」を作れる
サントリー公式VTuberである燦鳥ノムさんは、サントリーの商品の宣伝を目的として活動しています。
その中で、燦鳥ノムさんの故郷として「水の国」というワードが頻繁に出てきます。
この水の国をデザインして、メタバース化すればサントリーの宣伝となるでしょう。
無論、ただ作るだけでなく、利用するメリットがないといけません。
サントリーは、
- 清涼飲料水
- ジュース
- お茶
- ミネラルウォーター
- コーヒー
- ビール
- ワイン
…と、多彩な飲料を販売しています。
それらの博物館を作ったり、人気作品とコラボした限定缶プレゼントキャンペーンなどをすれば、情報拡散されて集客効果もあります。
また、メタバースの制作過程の情報を燦鳥ノムさんのチャンネルなどで小出しに発信することで、興味を引きやすくもなります。
前例:サンリオのメタバース&公式VTuber
⬇サンリオは、すでにメタバース化しています。
⬇そして、サンリオ社員が、企業系VTuberとしても活動しています。
いずれは、テーマパーク全体がメタバース化する可能性も十分あります。
そして、VTuberがメタバース内で案内役をする可能性も十分あるのです。
メタバース×企業系VTuber
今後は、メタバース運営をする企業が増えていくのは確実です。
メタバースを作るためのコストは、これからドンドン下がっていくので、メタバース参入障壁は下がっていきいす。
また、VTuber運営の参入障壁も、ドンドン下がっています。
Live2Dアバター(2Dでありながら、立体的表現がある程度 可能なアバター)なら、かなり低予算から活動スタートすることができます。
従来のようにマスメディアに膨大な広告費を投下するよりも、とても少額の資金でできるので、中小企業でもはじめやすいです。
もちろん、メタバースと企業系VTuberの知名度が上がらなければ広告効果も上がりませんが、メタバース自体これから発展していくのは確実です。
- VTuberで親しみやすさを感じてもらい、メタバースで自社製品・サービスを体験してもらう
…という戦略は、これからの企業戦略として、王道化していくでしょう。
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