NF亭ショウタです。
世界初、VTuber事務所がDAOで運営される事例です。
この「Vhigh!」というプロジェクトは開始されたばかりで、情報は ほとんどありません。
しかし、少ない情報からでも多くのことが推察できます。
この記事では、
- DAO VTuber事務所「Vhigh!」のロードマップの全体像
- メリット・デメリット
- 未来予測
…を解説していきます。
VTuberプロダクション×DAO「Vhigh!」とは?
VTuber事務所とDAOが融合
VTuber事務所運営を、「DAO」という組織構造で行うプロジェクトです。
(※「DAO」は、次の項で解説します。)
フェーズ0.0〜3.0までの計画のロードマップが発表されています。
(くわしくは後述します。)
発信される情報も ほぼすべてが英語です。
つまり、英語圏をターゲットにしています。
プロジェクトを実行している株式会社ハイボールは、自社のYouTubeチャンネル運営・動画制作・大人向けSNSの運営などを行っていました。
そして、2022年1月20日に VTuber事務所✕DAO プロジェクト「Vhigh!」をスタートしたのです。
VRchatやSandboxでも使える3Dアバター制作も計画されていて、メタバースも視野に入れたプロジェクトです。
DAOとは?
DAOとは、分散型自律組織の意味です。
(DAO=Decentralized Autonomous Organizationの略)
DAOでは全メンバーが平等に発言・提案することができます。
さらにDAOは中央に意思決定者がおらず、意思決定は投票によって行われます。
従来の組織では中央に社長がいて最終的な意思決定をしていましたが、DAOではメンバー間に上下関係がありません。
画像引用:fisco
あるのは、
投票権(ガバナンストークン)所有量が多ければ、投票時に希望の選択肢に多く投票できて、可決されやすくなる優位性です。
ガバナンストークンは取引所で売買できます。
参加したいDAOがあれば、そのDAOが発行するガバナンストークンを買って参加します。
また、DAOが進めるプロジェクトへの貢献度に応じて、ガバナンストークンが配布されることもあります。
DAOの人気が上がれば、ガバナンストークンの相場価格も上がりやすくなります。
そのため、ガバナンストークンを買ってDAOに参加して、ガバナンストークンが値上がりしたら売却益をゲット・・・という稼ぎ方が可能になるのです。
(⬇さらに深くDAOを知りたいなら、こちら。)
Vhigh! ロードマップ全体像
Vhige! 公式のこちらの記事を和訳して要約しました。
5段階の計画・3種類のNFT発行
公表されている計画は、
- フェーズ0.0:1000個のアバターNFT無料配布
- フェーズ0.5:投票➡Live2DアバターをNFT保有者全員に無料配布
- フェーズ1.0:Live2Dアバターの有料販売
- フェーズ2.0:3Dアバター有料販売(メタバースでも使用可能)
- フェーズ3.0:DAO開始
…の5段階に分かれています。
NFTの発行は、「Vhigh! Avatar Gen 0.0」から「Gen 2.0」までと、3種類を予定しています。
- Gen 0.0 NFT(無料配布)=DAOに参加する人が所有する「ガバナンストークン」(所有者全員に同じLive2Dモデルが さらに無料配布)
- Gen 1.0 NFT(有料販売)=VTuber活動する人が所有する「Live2Dアバター」
- Gen 2.0 NFT(有料販売)=VTuber活動する人が所有する「3Dアバター」
※ドラフト版(本格始動前の段階)であり、今後変更される可能性もあります。
⬇くわしく解説していきます。
フェーズ0.0:1000個のアバターNFT無料配布
1,000体のアバターが生成され、自動プログラムでNFTが発行されます。
VTuber事務所「Vhigh!」というDAOを作る協力者を集めるため、その1000個の「Vhigh! Avatar Gen 0.0」と呼ばれるNFTは無料配布されます。
このGen0.0(Generation0.0) NFTは、Vhige!におけるガバナンストークン(投票権)としても使われます。
また、無料配布はすでに完了していますが、NFTマーケットプレイスで二次流通しており、購入可能です。
フェーズ0.5:投票➡Live2DアバターをNFT保有者全員に無料配布
1000個のNFTが発行されたら、Vhigh!の象徴となるアバターを選ぶため、NFT保有者による投票を行います。
Gen0.0 NFTの保有者は、この選挙において3票の選挙権を持っています。
この選挙で最多得票のアバターはLive2Dモデルが制作され、Gen0.0 NFT保有者全員に無料配布されます。
その後は、
- NFT保有者向けのLive2Dアバター用プラットフォームの開発
- 効率的なLive2Dの開発方法
- NFT保有者とのコミュニティ構築イベント
- 「Vhigh!」をPRするマーケティングの考案
これらを完了したら、フェーズ1.0に進みます。
フェーズ1.0:Live2Dアバターの有料販売
VTuber活動をすぐにスタートできる高クオリティなLive2Dアバター Gen1.0 NFTを、一般向けに販売します。
Gen1.0 NFTの所有者は、アバターをLive2DとしてYouTubeなどのプラットフォームで自由に使用できます。
加えて、NFT所有者向けの「Live2Dアバター用プラットフォーム」もリリースします。
プログラムによる自動生成で、VTuberモデルの作成コストを下げます。
より安価で高品質なLive2Dアバター量産を目指します。
このLive2Dアバターで活動をする 個人運営VTuberが 増えることを目指しています。
フェーズ2.0:3Dアバター有料販売(メタバースでも使用可能)
Gen2.0NFTを一般向けに販売します。
このNFTは、メタバース(VRchatやSandbox)や他のプラットフォームでも使える3Dアバターです。
可能なら、3Dアバターを試すためのプラットフォームもリリース予定。
3Dアバターを作成し、多くの人がメタバース空間で楽しむのを目指します。
フェーズ3.0:DAO開始
Vhigh!をDAO化します。
フェーズ2.0までの中央集権的な組織でしたが、このフェーズ3.0では非中央集権な組織となります。
VTuberたちが収益を得て、VTuber活動に集中できるようビジネス環境を構築します。
また、VTuberに助成金を出すことも目指します。
投票で意思決定されるVTuber事務所
今までのVTuber事務所運営は、必ず中央に意思決定者がいました。
たとえば、超大手ホロライブではCEOである谷郷氏が意思決定者です。
「新規メンバーをデビューさせよう!」
「他の事務所とのコラボ配信を増やそう!」
「メタバースで使えるオリジナル仮想通貨を発行しよう!」
…などの重要事項の案が出ても、最終的な意思決定はCEOである谷郷氏1人の判断で決まります。
しかし、
DAO化されたVTuber事務所の場合は、意思決定は特定の人間の判断ではなく、ガバナンストークンによる投票で決まります。
たとえば
「メタバースで使えるオリジナル仮想通貨を発行しよう!」
…という案が出たら投票が行われます。
ガバナンストークンが過半数を超えて可決され、仮想通貨発行が決まります。
そしてメンバーたちは、さらに具体化していくための会議を進めていくのです。
「名称は、どんなのが良いか?」
「発行上限枚数は、何万枚にすべきか?」
「発行ペースは、どのくらいが良いのか?」
…といった疑問に対して多くの人からアイデアが出て、それらも投票が行われます。
こうしてドンドンと詳細が決まっていき、実現に近づいていくのです。
このようにDAOのVTuber事務所の意思決定は、特定の人間ではなく ガバナンストークン保有者全員による投票で決定されるのです。
DAOでVTuber事務所 運営のメリット
運営・投資家・VTuberの境界線がなくなっていく?
従来のVTuber事務所は、
- 事務所の運営サイド
- スポンサーとして出資する投資家
- アバターを使って活動するVTuber
…というように、明確に分かれていました。
しかし、この境界線が薄くなるでしょう。
たとえば、
Live2D・3DアバターNFTを所有・使用して活動するVTuberがガバナンストークンを買えば、投資するスポンサーにも なりますし、事務所運営サイドに参加して戦略を提案することもできます。
VTuber本人が、運営に自由に参加できるのです。
運営サイドよりも視聴者と近い位置で活動しているので、運営サイドではわからないようなVTuber活動の”機微”も知っているでしょう。
実際に活動する者の知見を活かして、アイデアを出すことができます。
逆に、
ガバナンストークンを所有して運営に参加していて良いアイデアが浮かんだ場合、アバターNFTを買えば自分自身がVTuberとなって実行することもできるのです。
3つの立場をシームレス(境界線なく)移動しやすい、同時に行いやすい といえます。
つまり、お互いの立場と諸事情を理解しあう・・・という事が しやすくなります。
どの立場でも、匿名で参加できる
前述した、事務所・投資家・VTuberの3つの立場すべてに、匿名で参加できます。
- 運営に参加・投資するための、ガバナンストークンの所有権
- VTuber活動をするための、アバターNFTの所有権
…は、ブロックチェーンで証明されます。
つまり、ブロックチェーン技術の匿名性を活かして参加できるのです。
諸事情で身分を明かせなかった者、履歴書に書いたら全く評価されないような経歴の者にも、平等に門戸が開かれているのです。
情報感度が高い人間が集まる
DAOを理解してトークンを購入するような人は、情報感度がとても高いです。
したがって、DAOという組織構造のVTuber事務所の運営サイドには、新しいテクノロジーへの情報感度が高い人たちが集まります。
そんな有識者たちからは、web3.0で生き残るための知恵やコネクションを持つ人もいるでしょう。
多角的な視点からのアイデアが集まる
VTuber事務所運営では、とうぜん戦略が必要です。
多くのガバナンストークン保有者が出入りするDAOでは、従来の企業のような一部の上層部のみでの会議では決して思いつかない、多角的なアイデアが出やすいです。
多くの人たちの知恵・経験に基づいた多角的な視点があるので、幅広い運営戦略のアイデアが期待できます。
VTuber運営・活動したい人が世界中から集まる
VTuberは、世界中に存在します。
とうぜん、
- VTuber事務所を運営したい人
- VTuberをプロデュースしたい人
- VTuberとして自分で活動したい人
…も世界中にいます。
でも、従来の組織ではコミュニケーションが必要なため”言語の壁”が難点でした。
しかし、DAOなら「条件が満たされた時、あらかじめ決めた処理が自動実行される」というプログラム(スマートコントラクト)があるので、言語の壁による「言った、言わない」のトラブルが なくなります。
選挙時だけでなく通常時の話し合いもチャットなど文字で行われるため、自動翻訳機能で外国人との意思疎通がしやすくなります。
VTuber運営戦略において海外展開は超重要ですので、外国語が壊滅的に苦手な日本人にとって、これは極めて大きなメリットです。
DAOでVTuber事務所 運営・デメリット
事務所全体のコンセプトが、ブレやすい恐れ
多種多様な知恵・経験を持つ人が集まる良いアイデアが集まるメリットがありますが、同時に収拾がつかなくなるリスクもあります。
個々人がやりたいアイデアを持ち寄るカタチですから、「単体では良いアイデア」であっても、それらの集合体であるVTuber事務所 全体で見た場合、方向性がバラバラになってしまう・・・
…という事態になりやすいのが大きなデメリットといえます。
Vhigh!はDAOのVTuber事務所としては初でも、それだけでは注目されるかは未知数です。
マーケティング視点では、「後発はニッチに絞る」が基本戦略です。
VTuber事務所としては後発なので、特化する専門性が必要となります。
方向性がバラバラだと、特化する専門性がブレてしまい、事務所全体での収拾がつかなくなるリスクもあるのです。
ブロックチェーン以外での金の流れが不透明
VTuberは、
- スパチャ(投げ銭)
- 企業案件
- グッズ販売
- FANBOX(サブスク支援サイト)
…などでの収益が主流です。
しかし、これらは法定通貨で支払われます。
(米国で活動するVTuberの場合は、ドルで支払われる。)
その法定通貨は、ブロックチェーン上での取引でないため、履歴は残りません。
つまり、「資金提供する代わりに、利益の◯%をDAOに納める」というルールでVTuberとして活動する人が いくらでも、不正に着服できるのです。
なので今後、何らかの交換条件として利益の一部を納める…というルールを作る場合、現状のVTuber界で取引される法定通貨の場合、自己申告に委ねられる・・・。
つまりブロックチェーンの透明性が活かされません。
VTuber界での経済圏で仮想通貨が主流になれば話は別ですが、現状は難しいでしょう。
つまり、収益化の手段がブロックチェーンで管理できる範囲内に限られてしまうのです。
最初から完全なDAOにすると、乗っ取られる
Vhigi!は、現在は株式会社ハイボールCEO大田卓矢 氏が主導で運営されています。
まだ非中央集権なDAOではなく、中央集権的な従来型の組織形態なのです。
なぜなら、
早すぎる段階でDAOにしてしまうと、ガバナンストークンを大量に買って乗っ取る・・・ということができてしまうからです。
ガバナンストークンがあれば、自分だけに都合のよい提案をして大量のガバナンストークンにモノを言わせて可決できてしまうのです。
そんなことをしたら、DAO自体が後退していくのは確実です。
前述したロードマップでのフェーズ3.0でDAO化される予定ですが・・・
すでに競合他社が乗っ取る算段を計画しているリスクも、少なからずあるのです。
スピード感に欠けやすい
ガバナンストークンによる投票で意思決定するDAOでは、とうぜん投票期日まで待たなくてはいけません。
また、投票でより多くの賛同を得るために、ていねいに説明する手間もかかります。
自分の考えを誰にでも伝わりやすいように言語化する・・・というのは、思った以上に思考力と時間を使うので、とても大変なのです。
なので、1つ1つの事項を決定するたびに、時間がかかってしまうリスクがあります。
無難なアイデアになりやすいリスク
アイデアが実行されるには、投票で過半数を得る必要があります。
そのため、「多くの人が理解しやすいアイデア」「多くの人に賛同されやすいアイデア」が通りやすくなります。
DAOでVTuber事務所を運営…というプロジェクト自体は革新的です。
しかし、運営戦略では「無難で安全な戦略」ばかりが採用されやすくなるリスクもあるのです。
重要人物が急にいなくなる
特定のジャンルの専門家が、
「このジャンルでやってみたいアイデアがある!
自分は専門スキルと経験があるから、任せてくれ!」
…とアイデアを出し、可決された戦略が進んでいたとします。
その専門家のプロデュースで、そのジャンルに特化したVTuberが活動をスタートしたとします。
しかし、その専門家が飽きてしまった場合、とつぜんドロンと消えるリスクがあります。
DAOは匿名で自由に出入りできるのが、参加する個人視点での大きなメリットです。
反面、
組織全体の視点では、DAOに重要な人材がある日とつぜん消えるリスクもあります。
つまり、「特定のメンバーが関わり続けるのが前提のプロジェクト」は、苦境に陥ったら面倒くさくなって辞める・・・という可能性が、匿名ゆえに起こりやすいかもしれないのです。
DAOで可能になるVTuber事務所の運営戦略
活動利益すべてVTuberの取り分
活動するVTuberの利益を事務所が持っていく…という従来の構造がガラッと変わります。
- ガバナンストークン販売
- アバターNFT販売
- ガバナンストークンの相場価格が上がったら売却益
- ファン向けに所属VTuberのNFTアートを制作・販売して利益
…で利益を得るなら、
VTuberが活動で得た利益から何割かを徴収する…という必然性もなくなります。
これは、VTuber本人からしたら大きなメリットとなり、やる気も出やすいです。
補足ですが、
これらのお金の流れはブロックチェーンで取引されるので、「DAOの共有ウォレットなどに利益を入れて、資金を管理する」というのも可能です。
資金の収支の透明性の高さも、DAOの利点なのです。
膨大な人数の知恵・経験がVTuber戦略に有効活用
VTuber運営に興味があっても、実際に運営する手間も資金もない人は大勢います。
そんな人たちも、DAOのガバナンストークンを購入すれば、VTuber事務所運営に参加できるのです。
ガバナンストークン保有者たちには、それぞれ得意なジャンル(マンガ・アニメ・ゲーム・スポーツ・音楽・サブカルチャー など)がある人も大勢いるでしょう。
そのジャンルでの知見をVTuber運営に活かせるのです。
既存VTuber事務所のような中央集権的な組織では、社長や側近の現時点の知見を超えた発想は出にくいです。
しかし、DAOは少数の人間の知見を遥かに超え、メンバーの数だけの知見と頭脳があるのです。
反面、
個々人から その時点で興味があるアイデアが飛び出すので、特定の事柄を深く突き詰めていく・・・という事務所全体での専門性が出ないリスクもあります。
つまり、やりたいことは人それぞれですから、まとまりがつかなくなる恐れがあるのです。
なので、事務所全体のコンセプト・目指す方向性を明確化して、それに賛同しない人は最初から来ないようにすべきなのです。
完全なDAO化における重要ポイント
「コンセプト・大枠の方向性」の明確化が必須
もちろん多種多様な個性・得意ジャンルを持ったVTuberがいるべき なのですが、VTuber事務所には、「コンセプト」「大枠の方向性」が必要になります。
⬇例えば、超大手VTuber事務所ホロライブは現在、メタバース開発を開始しています。
上記の記事内でも解説してますが、
ホロライブによるメタバース開発は、⬇この図のように全体が構成されています。
上の図のブロック1つ1つが、深い思考で導き出されたアイデアで開発されています。
一部の上層部による会議などで決定されて戦略・戦術が練られているのです。
一部の上層部が深く考えアイデアを出し合い、最終的にCEO(最高経営責任者)が意思決定・統括をする
・・・という従来型の組織構造の大きなメリットは、少数精鋭による”思考の深さ&決定のスピード感”といえます。
DAOでは、良いアイデアがあっても
- 誰にでもわかりやすく解説
- 投票で意思決定を待つ
・・・というプロセスが避けられないので、”思考の深さ&決定のスピード感”においては不利になりやすいです。
また、経験則から生まれる”感覚”が重要になる戦略もあります。
そのジャンルの専門家が膨大な経験値・思考を重ねて練った戦略であればあるほど、専門家でない者に それを説明するのは難しいです。
したがって「言語化しやすいアイデア」「専門家でなくても理解しやすいアイデア」しか、採用される見込みは少ないのです。
「いや、VTuber事務所の運営のDAOだから、VTuberの専門家が集まるでしょ!」
…と、思うかも知れません。
しかし、「VTuberというジャンルの専門家」だけではダメです。
VTuberは現在1万6千人を超えるので、差別化のために「他ジャンルと組み合わせる」のが重要になります。
「VTuberの専門家×他ジャンルの専門家」だからこそ、独自の戦略が生まれます。
たとえば、
⬇VTuber×メタバース×ブロックチェーン技術
⬇VTuber×メタバース×ご当地
⬇VTuber×中華圏×ARシアター
⬇VTuber×ファッション
これらのように、「VTuber×他ジャンル」で、強力な差別化要素が生まれるのです。
運営サイドとVTuberの力関係
前述したとおり、活動するVTuber本人がガバナンストークンを保有すれば、運営サイドに自由に参加できます。
従来のVTuber事務所では、「VTuber本人≪運営サイド」の力関係になってしまいますが、DAOであることにより力関係が変動しやすくなります。
たとえば、
所属して活動するVTuber本人たちの多くがガバナンストークンを保有することになれば、それだけVTuber本人たちの事情に適したアイデアが提案・可決されやすくなるのです。
運営サイドにのみ参加する人は、「web3.0の情報収集」や「深い思考」を重視する傾向が高いでしょう。
VTuber活動と運営サイド参加を両立する人は、「わかりやすいエンタメ性を追求」する傾向が高いかもしれません。
運営サイドで、「web3.0の情報収集・深い思考」「わかりやすいエンタメ性の追求」の、これらの比重が変動しやすくなるのです。
もちろん、これらは両立すべきなのですが、”言語化しやすい範囲”を超える感覚がもとになる主張は、理解されにくいです。
web3.0時代は始まったばかりなので、手探りの状態です。
成功事例も無いことが多いので説明が難しく、”感覚的に判断”する局面も多いでしょう。
そのような場合は、理由を言語化していないので理解されにくいです。
また仮に、似た戦略の成功事例が存在して、それを根拠に提案しても
「このような失敗事例も存在するじゃないか!」
…と、反論されるのも予想されます。
そうなると、相互理解の姿勢はなくなり、ガバナンストークン所有量にまかせたゴリ押し投票合戦になりかねません。
提案が通ったメンバーは残りますが・・・
一方で提案が通らず
「この事務所は、将来性がない!」
「賛同する しない以前に、主張の内容すら理解できないのか!」
…と思ったメンバーは、ガバナンストークン売却に向かいます。
ガバナンストークンが売買されていくごとに、事務所全体が重視する要素がブレて一貫した芯がなくなってしまうリスクもあるのです。
メンバーの相互理解しやすいルールや雰囲気を作ることが、重要になってくるでしょう。
新しい娯楽の楽しみ方➡「運営に参加」
これまで資金もコネもない人は、娯楽を「消費者」としてコンテンツを受け取る選択肢しかありませんでした。
しかしDAOでは、「運営に参加する」という楽しみ方が生まれます。
様々なDAOの事業計画を見て、興味があるDAOのガバナンストークンを買えば、自ら娯楽を創る側にも参加することができるのです。
「面白いアイデアがあるけど、実行する資金がない!」
「専門スキルを持つ人たちが必要だけど、集めるコネもない!」
…という感じで、娯楽を創りたいけどできなかった人は多いです。
しかし、DAOでは多くの人が集まっているので、そこで自分のアイデアを提案すれば、可決されて実行される可能性が生まれます。
そして自分のアイデアが実現してカタチになった後は、
- 次のアイデアを提案する
- 満足してやめる
…という選択肢の自由があります。
これは、新しい娯楽の楽しみ方と言えます。
自らDAOを開始するのも可能
既存のDAOに参加するだけでなく、自分でDAOを始めることもできます。
事業計画を打ち出せば、賛同者が集まり仲間としてともにビジネスを成長させてくれます。
VTuber業界では、実行したい計画がある場合にクラウドファンディングが使われることが よくあります。
- 無料公開する音楽ライブの開催の資金
- Live2Dアバターで活動するVTuberが、3Dアバターを制作する資金
…を集める目的で使われる事が多いです。⬇
しかし、クラウドファンディングは「すでにファンがいる」という大前提がなければ成り立ちません。
また、失敗するリスクもあります。
たとえば、ゴシップ系の情報を発信するチャンネルの実例ですが、
約1万人という多くのチャンネル登録者がいて動画アーカイブの再生回数も多いのに、クラウドファンディングで15,000円(目標金額の12%)しか集まらなかった
…という事例もあります。⬇
ゴシップ系の発信をしていると、応援してくれるファンではなく、他人の欠点を叩きたい視聴者が集まりやすい…という失敗事例です。
つまり、「お金を出してても応援したい!」というファンが既にいる状態でないと、クラウドファンディングで資金調達は難しいのです。
しかし、DAOの場合はファンがいない状態であっても、事業計画を打ち出せば多種多様なスキル・経験がある仲間が集まりやすいです。
(もちろん、DAOの事業計画を多くの人に知ってもらうための施策は必要ですが。)
DAOという概念は未知数の可能性
DAOという企業形態は、まだまだ事例も少なく手探りの状態です。
未知の部分が多すぎて、リスクも大きいのです。
しかし未知ということは、可能性も大きいので、ハマれば ものすごい躍進を遂げるチャンスもあります。
この記事で解説した、VTuber事務所DAO×プロジェクト「Vhigh!」における現時点での懸念点は、
「自動生成される多数のアバターが、似た印象を与えてしまわないか?」
…ということです。
プログラム自動生成され大量に販売される「安価で高品質なアバター」を使ってVTuber活動をする人が大量に増えたとしましょう。
アバターを構成するパーツである
- 髪型
- 髪色
- 目
- 口
- 鼻
- 輪郭
- 衣服
- メガネの有無
…により違いがあるにしても、同じイラストレーターなので似通った印象になってしまうリスクがあります。
「このキャラデザのVTuber、よく見るなあ・・・。」
…と思われ、初見でも新鮮味がなくなってしまう危険性があるのです。
しかし、同時に
大量のNFTを発行して所属VTuberを圧倒的に増やし、多彩なジャンルの専門家がVTuber事務所運営に参加する
いうDAOを応用した事務所は、未知の領域がとても多いので楽しみです。
公式のDiscordも運営されているので、今後 参加者が増えて活発化すれば、プロジェクト内容のクオリティがもっと上がっていくでしょう。
⬇こちらの多数の記事でも解説してますが、「VTuber×ブロックチェーン技術」の融合は、急激に加速しているのです。
ブロックチェーン技術もVTuberも、極めて大きな可能性を秘めているので、これらの融合によりどんな未来が実現するのか・・・
とても楽しみですね。
■追記
その後、VHigh! はVTuber活動者を募集するオーディションを開始しました。
このオーディション開催により、VHigh! は「ファン目線」「活動者目線」での共創を実現する、画期的なプロジェクトに進化したといえるでしょう。
⬇詳細
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