NF亭ショウタです。
現地に行かないと入手できないNFTがあります。
地方自治体が公式に発行するNFTです。
この事例から、地方自治体がどのようにNFTを利用していくかの本質を学ぶことができます。
- 北海道 自治体のNFTの詳細
- メリット・デメリット
- 未来予測
を、解説していきます。
現地でしか買えない「ご当地NFT」
販売方法
現地でしか買えないNFTは、北海道北広島市が販売しました。
2022年1月29日〜2月5日の期間内に、JR千歳線北広島駅に行き
- 設置されたQRコードを読み取る➡申込み➡抽選で1名に販売
…という流れで販売されたのです。
NFTの詳細
タイトル:
「団欒トラベルノート北広島市~旧島松駅逓~/Happy Travel Notes Kitahiroshima City ~Former Shimamatsu Station」
Polygonチェーン
発行枚数1枚:価格 2万5000円
(※最大29枚の追加発行を予定)
抽選の申込み(2022年1月29日~2月5日)をした人の中から、1名の当選者に連絡・販売されました。
このイラストは、北海道北広島市にある旧島松駅逓所を背景に描かれました。
※駅逓所(えきていしょ)=交通が不便だった北海道独自のモノで、幕末〜昭和初期に旅人や馬や郵便物の中継地点、宿泊のために利用された施設。
この旧島松駅逓所は、現存する最古の駅逓所です。
昭和59年(1984年)に文化財保護法で国の史跡に指定されました。
イラスト担当・鹿間ぐみこ
NFTのイラストを担当したのは、札幌市在住イラストレーター鹿間ぐみこさんです。
㊗️NEWS
本日北海道新聞26面に私のイラストと名前が掲載されました🎉
発行主体は北海道きたひろ観光協会さんで、今後自治体とのコラボを見据えたNFTのイラストを担当させて頂きました! pic.twitter.com/Y0PFPXOLfm
— 鹿間ぐみこ🐥gumiko (@gumiko_shikama) January 26, 2022
2019年6月からイラストをTwitterを中心に公開しており、個人サークルも設立しています。
2021年10月からNFTクリエイターとしても活動を開始しました。
「観光ふるさと納税の返礼品にNFT」の前段階
ふるさと納税とは、好きな自治体に寄付できる制度です。
寄付した返礼品(お礼)として、特産品などをもらえます。
画像引用:ふるさと本舗
今回の販売は、その前段階として実証実験です。
試験的に「北広島市に来てもらった人の中から、抽選で1名に販売」というカタチで実施されたのです。
そして今後、NFTを北広島市の ふるさと納税返礼品として配布されます。
北海道 北広島市とは
北海道 中部に位置する都市です。
新千歳空港から近いうえ、札幌市からも近いので、戦略次第では集客しやすい立地といえるかもしれません。
前述した旧島松駅逓所や温泉などが、名所として知られています。
北広島市の自治体&札幌市の企業が実施
このプロジェクトは、
- 一般社団法人 北海道きたひろ観光協会(北海道 北広島市)
- 株式会社あるやうむ(北海道 札幌市)
…により実施されました。
一般社団法人北海道きたひろ観光協会は、
自治体である北広島市役所内にある組織です。
今回のNFT販売の直前には、北広島市を舞台にしたマンガを切手として販売するなど、様々な取り組みを行っています。
株式会社あるやうむ は、
NFTを活用した地方創生をメインに事業を行う札幌市の企業です。
キャラクターグッズの製作販売も行っていたようですが、現在はNFT×ふるさと納税の事業に特化しているようです。
ご当地NFTのメリット
その街に愛着を持ってもらいやすい
今回の事例では、NFTイラストを見るたびに北広島市を思い出すキッカケになります。
「このNFTが欲しくて、はるばる北海道 北広島市まで鉄道を乗り継いで行ったなぁ。」
「寒空の下、屋台で食べたラーメン、美味しかったなぁ・・・。」
「冬だから寒かったけど、雪化粧された広大な森や大地が、綺麗だった・・・。」
…と、思い出が蘇りやすいのです。
脳内で北広島市のことを何回も思い出すと、北広島市に対して愛着が湧きやすくなります。
今後も、北広島市が発信する情報が目にとまったら、好意的に受け止めてくれるのです。
話題性による情報拡散
「ふるさと納税返礼品としてNFT」という試みは、とても先進的で話題性があります。
話題性が高ければ、ブロックチェーン情報のニュースサイトなどで記事ネタにしてもらえて、情報を拡散してもらえます。
つまり、より多くの人に北広島市を知ってもらえるチャンスが生まれるのです。
⬇また、同じく 町おこしにNFTを導入して話題性を高めて情報拡散した事例は、山古志村の「錦鯉NFT」があります。
NFTに興味が強い人が集まりやすい
今回のようなNFTを利用したプロジェクトは、とうぜんNFT関連の情報感度が高い人に興味を持たれます。
そして今後も、NFT関連のプロジェクトを実施する場合も、参加してくれやすくなるのです。
NFTによるビジネスはこれから爆発的に活発化していく・・・つまり、北広島市のライバルも爆発的に増えるのです。
しかし、このように”接点”を作っておき山古志村のように上手くコミュニティ感を出していけば、仲間意識が生まれて継続的にコミットしてくれやすくなります。
町おこしNFTの”先進事例”として語り継がれる
NFTは これからドンドン発展していく市場です。
とうぜん、町おこしにNFTを利用する事例もドンドン生まれるでしょう。
そうなったら、多くの事例の中に埋もれてしまいやすくなります。
しかし、「ふるさと納税返礼品にNFT」という事例が生まれれば、それは”先進的なNFT事例”として後々まで語り継がれます。
つまり、北広島市の名前も先進的なイメージとともに語り継がれるのです。
その後、新たなプロジェクトを実施する際にも、注目されやすくなる大きなメリットが生まれるのです。
ご当地NFTのデメリット
NFTを理解して、行動を起こす人は超少数
いま現在、NFTというものをしっかり理解している人は とても少ないです。
そして、NFTを得るために わざわざ時間や金を使って行動を起こしてくれる人は、さらに超少数になります。
NFTという最先端テクノロジーを扱うための 手間・時間・資金に見合う効果が期待できるか確実性があるかは、現時点では不明なのです。
しかし、NFT市場の今後の発展の可能性は高いので、将来性に期待するという意味では、有効と言えます。
発行数を増やしにくい
NFTの価値は変動します。
他の条件が同じならば、発行数が少なければ価値は上がり、発行数が多ければ価値は下がるのです。
そして、ふるさと納税の返礼品として受け取る人は、「NFTの価値が上がりそうか?」という点を重要視しています。
今回の北広島市のNFTでは、最大で30枚の発行になる予定です。
(今後、二次流通市場でどの程度の値段が付くのかが、NFT投資家たちに注目されそうです。)
しかし、今後また新しいNFTを地方創生にする自治体も出てくるでしょう。
その時、発行枚数の設定はとても重要です。
大量発行して残ったら、不人気な印象を与えてします。
かといって発行枚数が少なかったら、返礼品NFTを目当てにふるさと納税をしてくれる人も少なくなってしまい、発行のための手間・時間・資金 に対するリターンに見合うかは疑問です。
(1枚発行でも、30枚発行でも、労力は変わりません。)
注文されてから発行数を決定したら、レア度がブレまくる のです。
「先着◯名限定」とした後、反響が大きかったとしても追加発行して流通量を増やしたら価値が希釈されてしまい相場価格が下落します。
発行元の信用に関わるので、しないほうが良いです。
さもなくば、次回以降NFTを発行しても、
「このNFTも追加発行して、価値を落とすミスをしそうだな。」
と思われ、敬遠されるかもしれません。
海外にアプローチが超困難➡現地に行って買うorふるさと納税の返礼品
NFT市場は、日本国内より海外のほうが圧倒的に大きいです。
しかし、ご当地NFTのように
- 現地に行って買う
- ふるさと納税の返礼品
…という段階を踏む必要があると、外国人には手間がかかりすぎます。
外国人が興味を持ってくれたとしても、これほどの手間を掛けてくれるとは思えません。
「面倒な行動を起こしてくれるほど、北広島市に極めて強い興味がある外国人」は、全世界でみても極々少数です。
しかし言い換えれば、それだけ強い興味を持ってくれる層を集める・・・という意味では有効でしょう。
海外市場規模の大きさを理解した上で、あえて切り捨てる、
数は少なくても、極めて強い興味を持ってくれる人だけを集める・・・
という戦略なら、とうぜんアリです。
取り扱いミスしたら、取り返しがつかない
NFTは、ブロックチェーン技術で管理されています。
取引情報が永久に保管されるブロックチェーンの特性上、ミスをしたら取り消せない…というデメリットがあります。
たとえば、
- ウォレット管理ミス(秘密鍵・シークレットリカバリーフレーズの紛失や流出)
- NFT送信アドレスを間違える
…などが考えられます。
これらのミスは、後から気づいても どうしようもありません。
また、ミスしたからといって、
同じイラスト画像をアップロードして改めて発行する・・・という手段を取ると、価値が下がります。
⬇たとえば、このイラストをNFT化して1枚限定の返礼品としてプレゼントするとしましょう。
その際、1枚限定のNFTがミスにより 紛失した場合、やっかいなことになります。
返礼品として送信するために1枚を追加発行したら、総計2枚が存在することなってしまうのです。
受け取る人は予定通り1枚受け取ったとしても、「総計2枚の内の1枚」になってしまうので(単純計算で)価値が本来の1/2になってしまうのです。
そうなると、再度新しいイラストを用意してNFT化して、それでなんとか納得してもらう…など、後始末の手間が生まれます。
食品や日用品のように、「なくなっても、同じのを仕入れて送れば良い」という性質のものではないので、注意が必要なのです。
テストマーケティングに適した土地
”テストマーケティングの聖地”と”空港”から至近距離
北広島市から自動車で1時間(実測距離25.3km)の札幌市は、仙台・静岡・広島・福岡と並んで、テストマーケティングに選ばれやすい土地です。
理由は、
- 新しいモノを好きな県民性
- 札幌は大都市で人口密度が高く、多くのデータが取れる
- 大都市であり商業施設が完備、経済圏が独立(他の市に買い物に行くことが少ない)
- 市民の年齢層・所得額・嗜好が、全国平均と近い
- 域内のみを対象とした、ローカルな広告媒体がある(他地域の広告媒体の影響が少ない)
…という条件が そろっているからです。
たとえば、
チョコレートの新製品は秋から冬によく出ますが、テストマーケティングはひと足早い 夏に行われます。
そのような気温の影響を受けやすい商品の場合、特に夏でも気温が高くなりにくい札幌市がテストマーケティングの地に選ばれやすいのです。
そして、
今回の北広島市NFTの”実証実験=テストマーケティング”は、札幌市から至近距離なので、”ネットで完結せず、実際に現地に行く必要がある製品”のテストマーケティングに比較的 適していた・・・とも言えます。
もちろん、NFTをコレクションしている人は、他県からも集まります。
(その場合、前述の通り新千歳空港からアクセスが とても良いです。)
しかし、NFTをコレクションするほど強い興味がある人は、ごく少数であり、日本国民ほぼすべてがNFTに興味がないのです。
なので、
「ふるさと納税返礼品として、NFTに どれだけの効果が期待できるのか?」
…ということの判断指標として、
- 札幌市から、どれだけの人が来るか?
- 他の県から、どれだけの人が来るか?
というデータを取ったのだと思われます。
(購入権利の抽選応募フォームで、大まかな現住所などの必要最低限の個人情報は得れる。)
NFT美術館展開もありえる?
NFTアートは、現実世界の美術館に飾ることができます。
実際に、徳島県鳴門市は「NFT鳴門美術館」を運営しています。
また、ロシア・サンクトペテルブルク「エルミタージュ美術館」や、ニューヨークのマンハッタン”世界一細い超高層ビル”の一角でも、NFT美術館の運営が予定されています。
⬇詳細はこちら。
もちろん、イチから建設しなくても空いている建物を利用したり、立地条件的に良いところを試験的にレンタルしたり・・・ということも可能です。
すでに運営している「NFT鳴門美術館」に対して明確な差別化要素があれば、”日本の代表的なNFT美術館の1つ”として認知されやすくなります。
また、実際に美術館に訪れないと買えないNFTを季節限定で用意などの施策もできます。
もし足を運んでもらえなくても、「北広島市はNFT先進都市」というイメージを持ってもらいやすくなります。
これからNFT業界は発展していくので、そのイメージを作っておけば後々が有利になるでしょう。
NFTは、メタバース・VTuberは地方創生と相性が良い
北広島市はVTuberも運営していた
北広島市は、以前VTuberを運営していました。
VTuberを自治体が公認or運営する事例はこの頃は増えていますが、北広島市は早い段階から実行していたのです。
そして今回も、日本ではほとんど普及していないNFTを利用しています。
北広島市からは、NFTやVTuberという新しい文化を、いち早く取り入れる姿勢がうかがえます。
メタバース展開もありえる
新しい文化を積極的に取り入れる北広島市。
とうぜん、メタバースについても情報収集はしているでしょう。
そして、渋谷区が公認している「バーチャル渋谷」「バーチャル原宿」のように、北広島市の公認メタバースも作られる可能性は高いと思います。
また、メタバースはNFT・VTuberと相性がとても良いです。
- NFT=デジタル所有権の証明
- VTuber=メタバースのマスコットキャラ・案内人ポジション
…という価値があるからです。
NFTアートをメタバースの美術館に飾ったりできますし、すでにVTuber運営していた経験を活かしてメタバースで活動するVTuberを新たに運営する選択肢も有望です。
⬇北海道 北広島市の美しい雪景色がメタバースになったら、ぜひ行ってみたくなりそうです。
画像引用:flickr
⬇すでに沖縄県那覇市では【メタバース×VTuber×地方創生】のプロジェクトが進んでいます。
なので僕は、北海道の魅力を最大限活かしたメタバースの誕生を待とうと思います。
これから、全国各地で”新時代の地方創生”が始まると思うと、とても楽しみですね。
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