NF亭ショウタです。
「VTuber×メタバース」という化学反応が起ころうとしています。
VTuberは、世界に誇る日本発の娯楽文化です。
そして世界最大VTuber事務所が、爆発的に注目を集めているメタバース業界に参入しようとしているのです。
それこそが、VTuberのメタバース「ホロアース」です。
しかし、ホロアースを知りたくてネット上を探してみても、断片的な情報しか見当たらず、どんなメタバース事業になっていくのかが、非常にわかりづらいのが現状です。
なので、この記事ではVTuberメタバース「ホロアース」について網羅的に解説した上で、今後の展開を考察していきます。
世界最大VTuber事務所・ホロライブ
ホロライブは、1万6千人以上が存在するVTuber界で世界最大の勢力を誇るVTuber事務所です。
現在、日本だけでなく海外(英語圏・インドネシア)にも事務所を設立しており、メンバー総数は40名を超えます。
チャンネル登録者が100万人を超えるメンバーが多数在籍しており、圧倒的な人気があります。
運営会社は、当初はVR事業をしていた
ホロライブの運営会社であるカバー株式会社は、設立当初はVRゲーム開発を行っていました。
しかし当初の予測よりも、VRデバイスの世間への普及が遅いと判断したため、キャラクターをAR(拡張現実)で操作できるホロライブアプリを開発。
その後、本格的にVTuber事業に方向転換をしました。
そして現在、VR事業の経験を生かしてメタバース事業にも乗り出し「ホロアース」を開発しているのです。
「ホロアース」プロジェクトに向けて、90種の人材を大量求人
ホロライブは、2021年1月頃から、ホロアースという一大プロジェクトに向けて、公式サイトにて90種の技術者を正社員として大量募集しています。
・マンガ(プロデューサー・ディレクター)
・アニメ(プロデューサー・ディレクター)
・イラスト制作進行
・広報担当
・プログラマー
・新卒・中途採用 担当
・人事広報
・法務担当
・運営ディレクター・アシスタントディレクター
・新規タレント企画担当
…他、総計90種類の求人を出しています。
これだけ幅広い人材を正社員として大量募集するのですから、社運をかけた極めて巨大な事業であることがうかがえます。
ホロアース=異世界創造プロジェクト「ホロライブ・オルタナティブ」メインプロダクト
「ホロアース」と命名されたメタバースは、ホロライブが進めている一大プロジェクト「ホロライブ・オルタナティブ」のメインプロダクトです。
(※プロダクト=創作物)
ホロライブメンバーとして活動するVTuberたちにもホロライブ・オルタナティブ全貌の詳細は知らされていないらしく、VTuber自身のライブ配信で考察が行われたりもしています。
このようにファンを巻き込んでの考察をうながすことも、興味を持たせる戦略の1つといえるでしょう。
ホロライブ・オルタナティブ=VTuberとファンが共に体験できる世界
カバー株式会社は、「ホロライブ・オルタナティブ」プロジェクトについて、このように解説しています。
私たちは、バーチャルライブやオンラインゲームをはじめとした、所属タレントとファンの皆さんが同じ空間で楽しめる体験を提供していきたいと考えています。
「ホロライブ・オルタナティブ」プロジェクトでは、Twitter漫画やアニメPV等を通して、そのための世界観構築を進めていきます。
つまり、
「ホロアースという統一された世界観を、ホロライブ所属VTuberとファンが一緒に体験できる」
…というコンセプトが、ホロライブ・オルタナティブなのです。
このコンセプトを具体化するのが、メタバースをメインとする複数のプロダクトです。
■ホロライブ・オルタナティブ全体像■
(⬆クリックで大きな画像が開く)
・ホロライブ・オルタナティブPV動画
「ホロライブ・オルタナティブ」プロジェクトのPV動画です。
様々なフィールドや謎が残る要素が多く存在しており、詳細は不明です。
ネット上では、ホロライブファンによる このPVの考察が活発に行われています。
・Twitterマンガ
Twitter上で公開されているマンガです。
白上フブキさん・犬神ミオさん・百鬼あやめさんが登場しており、今後も不定期連載されていくようです。
・YouTubeアニメ
前述したTwitterマンガのアニメ化・・・といった印象で、クオリティも高いです。
また、楽曲は犬神ミオさんが歌っています。
・世界観アーカイブサイト
ホロアースの設定の詳細をまとめたサイトです。
ファン同士でホロアースの世界観を共有できます。
ホロアース=ホロライブのメタバースプロジェクト
ホロライブを運営するカバー株式会社CEOである谷郷氏は
「当社が提供するメタバースにおいて、一番大事な存在はゲームです。」
と、語っています。
そのため、ホロアースはゲーム要素の強いメタバースになると思われます。
そして、ホロアースは複数のサブプロジェクトに細分化されて同時進行で開発されており、それぞれ自由に往来できるようになる…とのことです。
それぞれのサブプロジェクトを、現状わかっている範囲で解説します。
(※「サブプロジェクト1〜サブプロジェクト3」という呼称は、この記事で便宜上つけただけであり、公式の名称ではありません。)
サブプロジェクト1. 会話・各種イベント「コミュニケーションロビー」
ホロアースの入り口であり、多くのプレイヤーと会話を楽しめるという、一般的にイメージされるメタバースと思われます。
ここで多彩なイベントを開催予定らしく、他のホロライブファンとの交流の場にもなるでしょう。
今までは、ファン同士がリアルタイムでコミュニケーションを取れる場は、VTuberがファン同士のチャット会話用に作った”フリーチャット欄”でのテキスト会話くらいしかありませんでした。
しかしメタバースなら、圧倒的にクオリティの高いリアルタイムのコミュニケーションをすることが可能になります。
また、ここでサンドボックスゲーム(次の項を参照)を一緒に冒険する仲間と出会うこともできるようです。
サブプロジェクト2. 生活・冒険「サンドボックスゲーム」
オープンフィールドで、「冒険」や「生活」をしていく、
プレイヤーの数だけ物語が存在する、そんな体験をめざしたサンドボックスゲーム開発プロジェクトです。
と、公式サイトで語られています。
つまり、プレイヤー自身が目的を決めて活動をしていくサンドボックスゲームなのです。
このサンドボックスゲームについての具体的な情報は、現在はテストプレイ動画のみとなっています。
生活・冒険に加えて、”建設”といったマインクラフト的なゲーム要素を備えたメタバースであることがわかります。
広大なフィールドで行動できるようです。
前述したホロライブ・オルタナティブのPV動画に、よく似たフィールドも描かれていましたよね?
なのでおそらく、PV動画に複数のフィールドが描かれているように、このサンドボックスゲームも複数のフィールドが創られているでしょう。
そして、各フィールドを往来できるようになると思われます。
サブプロジェクト3. アバター生成「アバタークリエイトシステム」
ホロアース上で活動するための、「アバターを作れる製作所」のようなイメージです。
そして、そのアバターは自由にファッションを楽しんだり、サンドボックスゲーム(前述した)を冒険するためのアイテムを装備したりできるとのことです。
また、アイテムはNFT化され、ホロアース内で取引されるようになる可能性が高いと思われます。
(くわしくは後述します。)
いずれ1つに統合する
サブプロジェクト1〜サブプロジェクト3 は、それぞれを各開発チームが担当して同時進行していますが、いずれ統合されて1つのメタバース「ホロアース」として利用できるようになるとのことです。
また、今後さらにサブプロジェクトが追加される可能性もあるでしょう。
対応デバイスについては、先にPC対応が優先されたあと、スマホ利用も可能になる予定です。
開発期間は1〜2年を想定
1〜2年ほどの期間をかけて開発される予定です。
前述した、サブプロジェクト2.のサンドボックスゲームのテストプレイ動画も綺麗なグラフィックにより構成されており、入念に開発されているようです。
メタバース市場は変化のスピードが早すぎるので、それに対応するために開発が遅れる可能性もあります。
しかし、アルファ版/ベータ版/テスト版/アーリーアクセス版…といった具合に段階を踏むと発言しているため、希望者の一部は早めにプレイすることも可能になるでしょう。
ホロアースが生み出すであろう経済圏
ホロアースは、経済圏を生み出すと予想されます。
…というか、メタバース自体が経済圏を生み出しやすい仕組みなので、それを利用しない手はないのです。
経済圏を生み出す手段として、
・オリジナルトークン発行
・NFT発行
…の2つをそれぞれ解説していきます。
オリジナルトークンを発行
ホロアースで使える通貨として、オリジナルトークンを発行するのです。
オリジナルトークン発行は、メタバース事業と非常に相性が良いです。
その理由は、3つ。
理由1.初期の集客手段
新規事業をはじめるにあたり、初期の集客は非常に重要です。
なぜなら、「人が多く集まっているところに、さらに多くの人が集まる」からです。
もし最初にお客さんが集まらなかったら、
「あのメタバース、利用者少なくてつまらん。他のメタバース行くかー」
…と、その後の集客も困難になっていますのです。
なので、その初期の集客のためにメタバース上で使えるオリジナルトークンをプレゼントする…というのは、とても有効な戦略なのです。
また、注目度が高ければ投資家にも注目されやすいため、投資家たちもオリジナルトークンを得るために集まってきます。
つまり、投資家たちも集客できると同時に、オリジナルトークンの需要が上がり価値が上がる…ことに繋がるのです。
すると、ホロアースのブランド力も上がるのです。
理由2.自社保有で利益
自社でオリジナルトークンを大量に保有しておけば、オリジナルトークンの相場価格が上がった時に売却益を得ることができます。
もちろん、市場に大量売却したら供給がハネ上がり相対的に需要が下がりますので、オリジナルトークンの価値が下落することにつながります。
なので、慎重な売却が必要になりますが、必要な時に必要なだけ売れば良いのです。
理由3.費用がかからない
オリジナルトークンを発行するのは、お金は ほぼかかりません。
ホロアース開発をはじめ、ホロライブ・オルタナティブ全体のプロジェクトには多額の資金が投入されていますが、オリジナルトークン発行はいつでも可能で費用もタダ同然です。
オリジナルトークン発行は、お金がかからないのに超有効な戦略なので、合理的に考えれば実行しない理由がない…といえます。
もちろん今後、日本の法律でガチガチに規制されてしまう可能性もありますが、可能なら海外に拠点を移す選択肢もあります。
また、
「ホロライブが仮想通貨を発行?怪しいことを始めた!」
…とイメージが低下する恐れもありますが、ホロアースが実用化される頃には、仮想通貨もそれなりに世間に浸透していき、そのような風潮は弱まっていくでしょう。
NFTを販売
NFTを発行して取引してもらえば、経済圏が生まれます。
・ゲームを有利に進行できるアイテム
・ファッションアイテム
など、ホロアースで使えるアイテムをNFTとして販売するのです。
つまり、「NFTゲーム」の要素を持つメタバースになる可能性があります。
(⬇「NFTゲームってなに?」って思ったら、こちらを読んでね。)
また、ホロアースで身につけられるファッションアイテムも、NFTとして販売することができます。
販売数が少ないレアな限定グッズなどは、他の人から羨望の目で見てもらえるため、優越感や承認欲求を満たすことができますし、いつでも転売できます。
また、ホロアース上にNFTマーケットプレイスを設置しても良いでしょう。
ホロアースが、ホロライブの中心地になる
web3.0時代への適応
時代は「web2.0」➡「web3.0」へと急速にチェンジしようとしています。
・web2.0(極一部の大企業に利権が集中・プライバシーやセキュリティ問題)
⬇
・web3.0(国を問わず、個人同士で自由に手軽な取引。利便性が大幅に向上。だが完全自己責任。)
つまり、web2.0時代の代表格ともいえるGoogleが運営するYoutubeからメタバースへと、人々が時間を使う比重が移り変わることを意味します。
いままでYouTube視聴に多くの時間を使っていた人々が、メタバースに多くの時間を使うようになるのです。
もちろん、YouTubeも見続ける人も多くいるでしょうが、使える時間は限られていますし、メタバースの普及により時の経過とともにメタバースの利便性が上がれば上がるほど、そちらに流れる人が増えます。
なので、社運をかけてメタバース展開に踏み切ったのは、とても有望な”適応進化”と言えます。
メタバース市場での新規ファン開拓
すでにVTuber界で絶大な影響力を持つホロライブが創っているメタバースなので、ホロライブファンが真っ先にホロアースを利用するのは確実です。
もちろん、メタバース市場はこれからどんどん注目度が高まるので、メタバース市場での地位を確立できれば、メタバースに興味を持つ層にもターゲットを大幅拡大することができます。
そして多くの人に認知・利用されるメタバースに成長すればするほど、ホロアースの経済圏も巨大になっていくでしょう。
メタバースを主軸とした戦略にシフト
YouTubeがオワコン化していく…みたいなことを書きましたが、YouTubeにも「短い動画なら手軽に見れる」という大きなメリットがあります。
長時間かけて考え練られた濃い内容を、数分の動画で見れるのですから、「手軽」「内容が濃い」という面ではメタバースよりも優位性があります。
しかし、長時間のYoutubeライブ配信の強みは「リアルタイム感」です。
VTuberや他のリスナーが「同じ時間を共有している感覚」が、ライブ配信の強みなのです。
…しかし、この強みはメタバースが上位互換になっていくでしょう。
ですが、YouTubeのライブ配信もメタバース内に組み込むこともありえます。
つまり、
ホロライブメンバーのライブ配信を、
1.ホロアース上でのディスプレイ上
2.YouTube上
の2ヶ所で同時配信…なども可能なのです。
メタバース上に存在するディスプレイでも動画は流れていますし、技術的には問題なく実現可能です。
また、「メタバース上でライブ配信の公開収録」をする…という場面も生まれるでしょう。
つまり、現在の状況から判断するとホロライブの運営戦略の”主軸”がYouTubeからメタバースにシフトしていくのは、確定事項と言えるのです。
VTuber界とメタバースの融合は極めて大きな可能性
今回解説したホロアースに限らず、VTuber界そのものがメタバースと非常に相性が良い業界です。
その理由を解説していきます。
アニメ志向アバターの優位性
メタバースで活動できるアバターは、「アニメ志向」が主流となっています。
企業の会議などカタい話をする場では「リアル志向アバター」が使われていくかもしれませんが、楽しむためにメタバースで活動する人は、表現の自由度の高いアニメ志向アバターを使うことが多いです。
・リアル志向アバター
画像引用:PR TIMES
・アニメ志向アバター
とうぜん、VTuberはアニメ志向ですので、メタバース上で活動する場合もVTuberをよく知らない層にも受け入れてもらいやすいです。
例えば、ホロアースの一般公開されれば、まずホロライブファンが一気に押し寄せます。
するとVTuberをよく知らない層にも、
「ホロアースってのが開始直後から凄い人気らしい!行ってみよう!」
…と思ってもらいやすく、新規集客にも有利です。
そしてこれは、メタバースをキッカケにVTuber界に触れてもらうチャンスでもあります。
つまりVTuberにとって、メタバース市場は新しい活躍の場であると同時に、自分がVTuberとして活動してきた軌跡を知ってもらうチャンスでもあるのです。
「リアル世界の旅行」に対する需要の受け皿「ご当地メタバース」
「ご当地メタバース」という単語は存在せず、僕の造語です。
既存の言葉で表現するなら、「ご当地要素の強いパラリアル(実在の街や名所のメタバース)」…と言い表せます。
しかし、長いので「ご当地メタバース」と呼称します。
現在、リアル世界の渡航は制限がかかっており、「日本の名所を旅行したい!」という需要が満たされていない人が非常に多いです。
なので、その需要に対する受け皿として、ご当地メタバースが有効になります。
ご当地メタバースの実例として、沖縄県のご当地メタバースを創る「バーチャルOKINAWA」というプロジェクトがあります。
これは、沖縄県ご当地VTuberを運営している会社が、沖縄県の名所のメタバースを創っているプロジェクトです。
現在、沖縄県那覇市の繁華街である国際通りを再現したメタバースを作っており、自社運営VTuberの活動の場所にもなっています。
また、他の県のご当地VTuberたちと一緒に伝統芸能を踊ったりと、「VTuber×メタバース」の融合をいち早く行った事例と言えるでしょう。
…すでに存在している「バーチャル渋谷」のような繁華街は、メジャー過ぎて ご当地要素はあまり無いですが、このような地方色が強い繁華街は ご当地メタバースとして海外からの旅行者を集客できる巨大なチャンスが生まれます。
また現在は、焼損してしまった首里城を完全な状態でご当地メタバースとして復活させる計画も同時進行しています。
このような「リアル×バーチャル」を融合させる地方創生にも活かせる戦略の自由度の高さも、メタバースの強みといえます。
VTuber始祖キズナアイも、メタバース&NFT事業に?
VTuber文化を世界に普及させたキズナアイさんは、2022年2月26日をもって無期限の活動休止すると発表しました。
その理由について、「私にしかできないことで素敵な未来を届けたい」「みんなと新しい楽しいを体験したい」と語っています。
⬇そして、その発表の際、メタバースとNFTに強い興味を持っていることを示唆しました。
最近でもメタバースとかNFTとか難しそうだけど、
楽しそうみたいな 新しいものを耳にすると思うんだけど
そういうものをもっと身近に届けてみんなと新しい楽しいを体験したり、
(中略)
それって私だからできることなんじゃないかなって
そして、これからの展望についても非常に前向きに語り、さらなるアップデートのための準備期間のようなカタチでの休止であると語りました。
また、活動休止後もプロジェクトは進んでいく…とのことです。
つまり、キズナアイさんもメタバース事業やNFT事業に関わっていく可能性が高いです。
⬇こちらの記事でも解説していますが、キズナアイさんはすでにNFTを販売しています。
(スクロールせず、直接その項まで飛びます。)
メタバース界の覇権争い
ホロライブは、VTuber界では覇権を獲ったといえます。
そして今回、VTuber界での影響力をフルに活かして、メタバース界でも覇権を獲ろうとしているのです。
メタバース界はまだまだ黎明期であり、これからドンドン発展していきます。
Facebook社が社名を「meta」に変更してメタバース業界に参入しているように、世界中の企業が参入してくるでしょう。
つまり、世界中の企業によるメタバース界での覇権争いが始まるのです。
そしてホロライブは「VTuber×メタバース」という世界を創造して、経済圏を生み出そうとしているのでしょう。
VTuber界とメタバース界は、これから融合していくのです。
どんな化学反応が起こるか、とても楽しみです。
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