NF亭ショウタです。
マンガ作品と連動した、NFTアートが販売されました。
ストリートアートをテーマにしたマンガです。
NFTの落札者は、「マンガに登場する権利」を得ます。
さらに、「入札記念NFT」と、スピンオフ マンガ作品の「マンガ原稿NFT」も無料配布されました。
この記事では、
- 概要とメリット・デメリット
- 可能なメタバース戦略
- アートの3次元化・4次元化
…を解説していきます。
左利きのエレンNFTの概要
マンガ作品「左利きのエレン」作中に登場するストリートアートが、NFT化されたものです。
(マンガについては、後述します。)
作中に登場するストリートアートの内、下記の2作品がNFT化されました。
・『黒い化物』
・『チェルシーの夜』
これらは、マンガの主人公である、「山岸エレン」が作中で描いたストリートアートが、そのままNFTアートとしてオークション形式で販売されたものです。
マンガに登場する権利
今回販売された2つのNFTをオークションで落札した者は、「左利きのエレン」の作中に登場する権利を得ることができます。
(2作品がオークションに出されるので、それらの落札者2名が参加権利を得るのです)
『黒い化物』は、アスターネットワーク(Astar Network)創業者である渡辺創太さんが落札しました。
オークションは、4月20日21:00~23日21:00にかけて行われ、落札額は132300ASTR(約333万円)でした。
また、『チェルシーの夜』は、200,000ASTR(約501万円)で落札されました。
落札者は、AstarDegens(アスターエコシステムのDAO)
(DAOとは、「自律分散型組織」です。➡詳細)
つまり、落札者である2名は、スピンオフマンガへの出演が決定したのです。
(※ちなみに、落札者は 両者とも、2022年1月17日に開始したブロックチェーンであるAstar Network(詳しくは後述)の関係者です。)
入札者全員に「入札記念NFT」
オークションに入札した人には、もれなく「入札記念NFT」が配布されました。
・入札記念NFT
はじめからオークションで競り落とす気がなく、この入札記念NFTをもらうためだけに入札したも多いでしょう。
しかし、「多くの人が参加したオークション」として、認識されやすく、ブランディングにつながります。
漫画原稿NFTの無料配布
NFT販売に先行して、公式サイトではスピンオフマンガが公開されました。
そして、これらのマンガ原稿もNFT化されて、100名に無料配布されたのです。
これらのNFT所有者は今後、自分が所有する入札記念NFTの相場価格をあげようと、左利きのエレン関連の情報を積極的に拡散してくれやすくなるのです。
日本発ブロックチェーンAstar Network使用
Astar Networkは、2022年1月17日に開始したばかりの、日本企業が開発したブロックチェーンです。
ブロックチェーンにはAstar Networkが使われており、イーサリアムやPolygonやAvalancheと比べて、Gas代(⼿数料)が安いメリットがあります。
(前述した) オークションで『黒い化物』を落札した渡辺創太さんが創業しました。
メタバース展示
NFT化されたストリートアートが、メタバースで期間限定で展示されました。
これは、マンガ作中で描かれたストリートアートをそのままメタバース美術館で再現したものです。
”壁にそのまま描かれる”ストリートアートは、”壁に飾られる”通常のNFTアートと一線を画した印象を与えます。
「NFTアート作品のメタバース展示」は、これからのスタンダードになっていくでしょう。
原作マンガ「左利きのエレン」とは?
原作マンガ
アート業界と広告業界をテーマにしたマンガ作品です。
2016年3月〜2017年9月までcakesで連載されました。
そして、2017年10月から少年ジャンプ+でリメイク版が連載されています。
また、2019年10月にドラマ化もされています。
さらに、舞台化も
- 2020年11月『左ききのエレン -横浜のバスキア篇-』
- 2021年1月19日『左ききのエレン -バンクシーのゲーム篇-』
…の2度、されました。
「新聞×Twitter」広告企画
2020年10〜11月にかけて、朝日新聞とTwitterという情報発信の媒体を連動させた広告企画である
「新聞広告の日プロジェクト 朝日新聞社×左ききのエレン Powered by JINS」が、大きな反響を呼びました。
これは、
- 左利きのエレン作中の「目黒広告社」
- 実在の広告会社「GO」
…の2つの広告社が、
実在の企業であるJINS社の製品「バイオレットプラス」の広告で直接対決するストーリーを、スピンオフ漫画として描き、
Twitter上で投票を行い、勝者の広告が朝日新聞に掲載される…という企画です。
公式サイトで、大きな画面で読めます。
また、スピンオフマンガには実在の企業JINS社が登場して、理念や広告依頼の経緯がストーリーとして語られました。
加えて、実在の広告会社「GO」の代表取締役も、ライバル役としてスピンオフ マンガに出演しました。
ここから、実際に掲載された新聞広告と、その経緯を解説します。
まず、「左利きのエレン」作中に登場する目黒広告社は、『近視の人しか見えない広告』を考案して、Twitter上で発表しました。
近視の人しか見えないメッセージを全国紙に掲載すれば、
「見えたor見えない」という議論がTwitterで活発化して情報拡散されるという試算です。
対して、「GO」は、『赤字修正広告』を発案。
「VIOLETという革新的な製品の魅力は、1ページの広告では表現しきれない」
…ということを伝えるため、その広告案に赤字で修正を入れた原稿を、そのまま掲載するという逆転の発想です。
そしてTwitterで行われた投票では、2342票が投票され、目黒広告社の『近視の人しか見えない広告』が実際に朝日新聞に掲載されたのです。
本日、朝日新聞に目黒広告社•朝倉チーム制作のJINS「バイオレットプラス」の新聞広告が掲載されています‼️
写真だと文字がハッキリ読めてしまうと思うので、ぜひ紙面で…笑#新聞広告の日#GO #朝日新聞 #JINS #左ききのエレン pic.twitter.com/W4D7DnmyP7
— かっぴー/左ききのエレン/15分の少女たち (@nora_ito) November 21, 2019
この一連の広告企画は大きな反響を呼び、
第40回(2020年)新聞広告賞(新聞社企画・マーケティング部門、日本新聞協会)に選出されました。
漫画系クラファンの支援額が日本一達成
また、電子コミックである「左利きのエレン」を紙の書籍化するクラウドファンディングが行われ、漫画作品のクラファンとしては支援額が日本一を記録しました。
当初の目標金額は3,000,000円でしたが、最終的には支援総額53,689,052円(達成率1789%)を記録し、クラファンの歴史に残る大記録を打ち立てました。
この漫画の人気の根強さを証明する事例といえます。
ストリートアートとは
ストリートアートは、街の壁など公共物に描かれるアート作品です。
描く際には、スプレー塗料などが使用されます。
(とうぜん、公共物や他者の所有物に無許可で描いたら、犯罪行為とみなされます。)
ストリートアートを描く主な理由としては、
- 街中などの方が、多くの人に見てもらえる
…というものです。
(ギャラリーだと、展示するには料金なども必要になりますし、ギャラリーのイメージと違う作品は飾ってもらいにくいです。)
また、
社会的問題、政治的問題を一般市民に提起する目的で、社会風刺的なストリートアートを描くケースもあります。
ストリートアートの展覧会
バンクシーなど、世界的に有名なストリートアーティストの展覧会は、世界中で開かれています。
日本でも、いままでに多くの都市でバンクシー展が開催されており、中田敦彦さんのチャンネルでも訪れた様子が発信されています。
⬇「バンクシーを詳しく知りたい!」ってアナタはこちらを見て。
ストリートアートは、迷惑行為と思われることも多いですが、このように世界的巨匠のように扱われる人も極々一部、存在するのです。
ヨーロッパでは、観光スポット化
ヨーロッパ諸国においては、ストリートアートが観光スポット化することもあります。
バンクシーを始めとするストリートアーティストの知名度の世界的な上昇により、ストリートアートが、1つのアートのジャンルとして認識されていき、
ストリートアートが、一般にも受け入れられています。
特に、
- ロンドン
- ベルリン
- パリ
- ハンブルグ
…などでは、観光客をターゲットにストリートアートを見て回るツアーが一年中開催されています。
特にロンドンでは、10種類ほどのツアープランが用意されているらしく、地方創生の手段として有効活用されているのがわかります。
さらに、ツアーガイドの多くは、美大卒や 他のクリエイティブなジャンルの専門家がつとめています。
このように、一般人にストリートアートの魅力を広める活動が活発に行われることで、その地位を確立しており、
ストリートアートが描かれていたスラム地帯が、ストリートアートの地位が上がったことで その空間自体の評価が上がった事例もあるのです。
リオ・オリンピックでのストリートアート
2016年に開催されたリオ・オリンピックでは、ブラジル・サンパウロ出身のアーティストが、巨大な壁画にストリートアートを描き、
オリンピックを見に来た観光客にストリートアートの魅力を知るキッカケを創ったです。
ストリートアートイベント
世界最大のストリートアートの祭典である、「パサデナ・チョーク・フェスティバル」が、毎年アメリカ・カリフォルニア州パサデナで開催されています。
数百名のアーティストが参加して、10万人以上の観光客を集めています。
他者の所有物や公共物に無断で描くのは迷惑行為ですが、
こうして しっかりとイベントとして開催すれば、ストリートアートの独特の世界観が、世間に浸透していき、ストリートアーティストの地位も上がっていくでしょう。
メリット:コンテンツの人気を、NFTに”高密度”で引き継げる
⬇漫画のNFTアートは、すでに存在します。

とうぜん、高い人気の漫画のNFTアートは、それだけ高い価値が出ます。
しかし、それらは「マンガ原稿」のNFTであり、「マンガに登場するアート」のNFTではありません。
左利きのエレンのNFTは、作中に登場するアートそのもののNFTですので、ストーリーと密接にリンクしています。
⬇「黒い化物」が描かれるまでのストーリー。
人間の脳は、ストーリーに反応します。
左利きのエレンでは、アート作品が創られるまでのストーリーが、登場人物の感情や事情と絡めて、表現されています。
従来のように、すでに出来上がったアートNFTが販売されるのではなく、創られる過程も知っているファンにとっては、従来のNFTアートよりも高い価値を感じます。
つまり、
左利きのエレンという作品の世界観(ストーリー+キャラの思想や感情)を高密度で引き継いだNFTアートなので、ファンにとっては より高い価値を持つNFTアートになりえます。
デメリット:ストリートアートを誘発させて、街に描かれるリスク
ストリートアートの多くは、他人の所有物や公共物に無断で描く…という行為です。
正しく許可を得て描けば正当なアートですが、無断で描くのは犯罪行為にあたります。
そして、「左利きのエレン」作中では、主人公が無断で公共物にストリートアートを描く姿がカッコよく描かれています。
その世界観に触発されて、同じように他人の所有物や公共物に無断でストリートアートを描いて、器物破損行為をしてしまう人が出てくるリスクがあります。
特に、日本ではストリートアートに対する規制が厳しいので、
ストリートアートNFTが今後増えていった場合、同時に無断でストリートアートを描く人が増える可能性もあります。
NFT市場は、今後は飛躍的に拡大していくので、
ストリートアートNFTがキッカケで、社会問題化する・・・というリスクがあるのです。
ストリートアートNFTで可能な戦略
メタバースの空中に飾れる
NFTアートを、メタバース上の”空中”に飾れたりすると、差別化になります。
もちろん、
”空中”に飾るとなると、立体的な”厚み”が必要になりますから、壁などの平面に描かれた厚みが無いストリートアートに比べると、制作の手間がかかります。
しかし、だからこそ差別化につながります。
また、
サイズを自由に変更して、一種のファッションアイテムとして着用できるようになると、個性的な”ファッションNFT”としての需要も拾えます。
(立体的なストリートアートを身にまといながらメタバースを歩いたら、なんかの能力者みたいでカッコいいかも)
描く過程の動画化
ストリートアートは、「描く過程の臨場感」も大きな魅力といえます。
スピーディーで躍動感ある動きで、瞬く間に世界観が表現されていく その過程も、ストリートアートの大きな魅力といえます。
この魅力を、知ることをできないのは非常に もったいないです。
NFTアートはたくさんありますが、「描く過程の臨場感」も体感できるのは、大きな差別化要素となります。
環境によって特殊効果が発動
メタバースで特定の条件を満たした場合、特殊効果が発動するストリートアートは、今後可能になるでしょう。
たとえば、
- 一定以上の高さに飾ると、自由に飛行する「龍」
- 水中に飾ると、泳ぐ「魚」
- 草木がある所に飾ると、燃えさかる「炎」
…など、一定の条件下でのみ見れる特殊効果があると、変化があり楽しめる余地が大きくなるでしょう。
(もちろん、特殊効果 ON/OFF を選択可能にする。)
色をカスタム可能
人により、好きな色は違います。
また、メタバースに飾る場合に、周りの景観によって相性の良い色は変化します。
なので、自由に色をカスタムできるようにすれば、
「自分のメタバースとは色の相性が悪いな…!」
…という理由で、購入を見送られるリスクを低くできます。
逆に、
「自分のメタバースでは、こんな色にすれば映える!」
…とインスピレーションを刺激するキッカケにもなりえます。
未来予測
NFTアート×マンガアニメ の融合
芸術・美術をテーマにしたマンガ・アニメ作品などは多く存在します。
それらが、NFT市場への参入を前提とした作品として生み出されることが増えるでしょう。
⬇コロコロコミックのホビーマンガで、新発売される商品が登場するように、

芸術をテーマにしたマンガ作品で、新発売されるNFTアートが登場するようになるかもしれません。
NFT販売はクリエイターにとって大きな収益源として有望なので、NFT市場が拡大するにしたがって、(NFT販売を前提として)芸術をテーマにしたマンガ・アニメ作品が増えていく可能性が高いです。
メタバース美術館で3次元作品を展示
すでに、メタバースで芸術作品を飾れる「メタバース美術館」は存在します。
そして、これからはメタバース美術館は、さらに立体的に、臨場感あふれるものになるでしょう。
くわしく解説します。
すでに、VRアートを創れる技術は存在します。
たとえば、せきぐちあいみ さんというアーティストは、立体的なVRアート作品を発表しています。
つまり、
画材(スプレー塗料・筆など)を両手に持ってアートを自由に描けるVR空間で、独自の3D(3次元)のアートをつくれるのです。
また、ムンクの「叫び」(1893年)などを、3Dの立体的なVR作品にして、飾ることもできます。
ムンク作品は、パブリックドメイン化(著作権保護期間が終了して、知的創作物の知的財産権が消滅)しているので、自由に転用することができます。
他にも「モナリザ」など、パブリックドメイン化して自由に転用できる歴史的名作を3D作品にして飾ると面白いでしょう。
”時間の概念”を加えた4次元アートも可能
また、
「時間によって姿が変化する」など、”時間の概念”を組み込んだ四次元アートも容易に実現可能になるでしょう。
例えば、モナリザの場合、
時間帯によって、
- モナリザ:朝ver
- モナリザ:昼ver
- モナリザ:夜ver
- モナリザ:雪ver
- モナリザ:雷ver
…と行った具合に変化をつければ、リピートされやすくなります。
また、特定の日時にメタバースに集客したい場合にも、
「『モナリザ:虹ver』を、◯月◯日◯時から期間限定公開!」
…と告知しておけば有効でしょう。
アートの歴史に、メタバースで革命が起こる
石器時代の洞窟に描かれた「原始美術」から、アートの歴史はスタートしたと言われています。
・フランス「ラスコー洞窟の洞窟壁画」紀元前2万年ごろ
・スペイン「アルタミラ洞窟の洞窟壁画」
紀元前2万〜前15,000年ごろ
以来、アートの歴史は進化しつづけてきました。
そして、メタバースという仮想現実の世界は、物理的な現実世界に比べて、圧倒的に自由です。
物理的な現実世界を制限する、
「過去➡未来」一方的な時間の流れ
「上➡下」一方的な重力の向き
…などをはじめとする、あらゆる制約から解き放たれます。
つまり、メタバースの普及により、
いままで人類が考えもしなかった、全く新しいアートが生まれる可能性が広がっているのです。
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