NF亭ショウタです。
埼玉県自治体が、公式にメタバースイベントを主催しました。
そこで、埼玉県公式の”バーチャル観光大使”であるVTuberが、広報・案内役を務めたのです。
【自治体公式メタバース×自治体公式VTuber】という先鋭的な戦略であり、そしてこれからは定番の戦略となっていく可能性が高いのです。
この記事では、
- 埼玉県公式メタバースの全体像
- 可能な運営戦略
- 未来予測
…について、解説していきます。
埼玉県 公式メタバースイベント「VIRTUALミズベリング」とは?
自治体の公式メタバース
正式名称「VIRTUALミズベリング in 越谷レイクタウン」は、埼玉県河川環境課が主催となって、2022年7月7日に行われたイベントです。
また、埼玉県ご当地VTuber 春日部つくしさんが、スペシャルステージ主催・メタバース制作を担当しました。
🎋水辺でカンパイ VIRTUAL ミズベリングの開催について🎋
7月7日(木)午後7時7分に、埼玉バーチャル観光大使の春日部つくしさんのご協力のもと、VRChat上の「バーチャルレイクタウン」にて、「水辺でカンパイ VIRTUAL ミズベリング」を開催いたします☆彡
詳しくは続報をお待ちください🎶 pic.twitter.com/rvKHDJRmiU— 埼玉県 河川環境課 (@kawakunisaitama) June 27, 2022
(協力会社 AI VOICEは、春日部つくしさんのボイスロイド・春日部つむぎを販売している企業です。)
そこでは、他のVTuberも招いてのライブが行われました。
自治体がVTuberを起用する事例は、近年増加しています。
そして、自治体公式VTuberが、VTuberと相性が良いメタバースで活動する事例も これから増加していくでしょう。
官民一体プロジェクト「ミズベリング」初のメタバース開催
ミズベリングは、
- 「水辺+RING(輪)」
- 「水辺+R(リノベーション)+ING(進行形)」
…という意味の造語であり、新しい水辺の活用法を見つけることを目的として、官庁と民間企業が協力して行われるプロジェクトです。
このミズベリングは、2015年から日本全国・海外などで実施されており、いままでに270以上の場所で行われました。
その、ミズベリングが、埼玉県の越谷市レイクタウンを再現したメタバースで行われたのです。
⬇メタバースの越谷市レイクタウン
画像引用:Mogulive
⬇現実世界の越谷市レイクタウン
⬇Googleマップ
ミズベリングのプロジェクトへのメタバース導入は初であり、メタバースの地方創生の新しい手法と言えるでしょう。
埼玉県 バーチャル観光大使「春日部つくし」が制作・広報・案内役
埼玉県ご当地VTuberとして活動する春日部つくしさんは、2021年7月に開催された埼玉バーチャル観光大使のオーディションで選出され、2021年11月14日から、埼玉県のバーチャル観光大使として活動しています。
また、このメタバースも春日部つくしさんが制作しました。
🥂水辺で乾杯!VIRTUALミズベリング🥂
会場のワールドが公開されましたわ!
現実の埼玉県にある越谷レイクタウンをもとに、
写真映えを目指した開放感のあるワールドになっております!
ぜひ足を運んでみてくださいね🌟https://t.co/NPnx94MAZJ#水辺で乾杯2022 #VRChat_world紹介 #VRChat pic.twitter.com/HGG5hHc3VN— 春日部つくし💿バーチャル埼玉県民 (@kasukaBe_nyoki) July 1, 2022
春日部つくしさんは、3Dモデル制作やイラスト制作なども行っており、多彩なスキルを持っているのです。
自治体による「メタバース×VTuber」が定番戦略になる?
これからは、
- 自治体公式メタバース
- 自治体公式VTuber
…の併用戦略が定番化していく可能性がとても高いです。
自治体公式メタバースは、「バーチャル渋谷」をはじめとして、すでに複数の事例が存在します。
また、自治体が運営または認定したVTuberも、多くの事例が存在します。
(そして、それぞれの事例の数も、これからドンドン増えていくでしょう。)
そして、アニメ志向のアバターであるVTuberは、メタバースのアバターとも親和性が非常に高いので、広報・案内役として適しています。
現実世界のイベント費用に比べて、メタバースは制作費や維持費は圧倒的に低く済みますし、デジタルデータなので破損・劣化する恐れもありません。
費用面でもメリットがとても大きいですし、時代の流れ的にも先進事例の仲間入りをしておいた方が今後の活動も情報拡散される可能性も高いです。
近い将来、自治体公式のメタバースとVTuberの併用戦略は、全国に広まっていく可能性が高いのです。
メリット
そのご当地に興味がある人が集まりやすい
ご当地VTuberのファンになる人は、そのご当地にすでにある程度以上の興味がある場合が多いです。
なので、メタバースの広報・案内役となった場合は、来場してくれやすいのです。
もちろん、メタバースを利用できるデバイスを持っているのが前提なのですが、
今後はより手軽に、多種多様のデバイスがメタバース接続可能となるでしょうから、メタバースの普及に伴い、来場者は増えやすくなるでしょう。
(もちろん、同じ戦略を取るライバルも増えるリスクもありますが。)
SNS情報拡散されやすい
ご当地VTuberのファンは、とうぜんそのご当地関連の情報に敏感です。
SNSでも、そのご当地関連のアカウントをフォローしている人も多いです。
つまり、ご当地メタバースの情報を敏感にキャッチしてくれるうえに、積極的に情報拡散してくれやすくなりやすいのです。
クラウドファンディングでの資金調達もしやすい
VTuber界では、クラファンは資金調達の方法として定番です。
しかし、
VTuberが一生懸命活動して、積み上げてきた信用を使うワケですから、自治体側は、絶対にVTuberを”資金調達ツール”として使い捨てにしたりせず、長期的なパートナーとしてwin-winの関係を築くことが必要不可欠になります。
デメリット
メタバースを理解して、来場してくれる人は少数
メタバースは、大きな可能性を秘めており、一般社会でも「メタバース」という固有名詞を知っている人は多いです。
しかし、実際にメタバース デバイスを所有する人は、まだまだ少ないのが実情です。
なので、いますぐに結果を出すことにフォーカスするのではなく、長期的な運営を見据えたメタバース展開が重要となります。
自治体がイチからVTuber運営は、軌道に乗らない恐れ
自治体が自らVTuber運営をして成功した例は、茨城県の茨ひよりさんです。
茨ひよりさんは、茨城県が公式に運営しているVTuberであり、
- デビュー1年間の時点で経済効果:2億4000万円
- デビュー3年間の時点で経済効果:5億円
…と、発表されています。
しかし、
これは茨ひよりさんが、2018年という早期から活動開始していた要因も大きく、これからVTuber運営をしても、これだけの成果を上げることは非常に困難です。
なので、これからは、春日部つくしさんと埼玉バーチャル観光大使プロジェクトのように、
(メタバース活動を前提として)すでに活動しているVTuberを自治体公式VTuberとして募集する…という手法が増えてくる可能性が高いです。
可能な運営戦略
NFT無料配布
メタバース来場者に、NFTを無料で配布します。
そのNFT所有者に、「VTuberの限定コンテンツ視聴権」「近隣のリアル店舗での割引」など、なんらかの優待権利をつければ価値が上がりやすくなります。
(また、二次流通市場で転売されたら、あらかじめ設定したロイヤリティが、利益として入ります。)
しかし、
「NFTってなに?ウォレットってなに?」って人も まだまだ多いのですが、これからのNFTの一般普及につれて、有効性を発揮していくでしょう。
⬇いずれNFTは一般社会でも、インフラと呼べるレベルに一般普及します。
現地でのみ買えるNFT
リアル現地に来てくれた人のみが購入できるNFTを制作します。
⬇すでに、地方自治体による前例があります。
これに、メタバースでの優待権をつければ、さらに価値が上がり現地に来てくれやすくなります。
また、その土地に伝わる”伝統的な民族衣装を、メタバースで着用できるNFT”など、地方色を活かした優待権利をつければ、情報拡散もされやすくなるでしょう。
⬇「NFT×ファッション」に関する記事
広告枠を売る
メタバースでの広告枠を販売します。
現実世界の名所をメタバース化したなら、とうぜんその近隣の企業や商店などは広告出稿を検討します。
その企業や商店向けに、広告枠を販売すれば、収益になります。
メタバースの一般普及にしたがい、広告出稿の需要も飛躍的に拡大するでしょう。
※また(次項で解説する)AR・MRでの広告枠も、販売することが可能です。
AR・MRと連動
AR(拡張現実)・MR(複合現実)を体験できるデバイスをつけて、リアル現地にいった場合に体験できるコンテンツを用意します。
⬇スマホで体験できるアプリ開発プロジェクトなども存在します。
今後は、スマートグラスやコンタクトレンズでAR・MRを体験できるようになり、一般普及していきます。
そうなると、AR・MR空間の広告枠の販売で、収益化が可能になるでしょう。
また、VTuberが現地を案内するAR・MR映像を流すのも、有効な戦術です。
(⬇「AR・MRってなに?」って場合はコレ読んで。)
コラボ
ご当地VTuber界では、別々の地方で活動するVTuber同士が、頻繁にコラボ配信しています。
なので、メタバースとVTuberの併用戦略の時も、コラボをすることによってお互いのメタバースの魅力を紹介しあうことができます。
VTuberのコラボ ライブイベントを1部・2部に分けて、
- 〇〇県〇〇市メタバース:19:00~19:50
- □□県□□市メタバース:20:00~21:00
…という具合に、双方のメタバースで開催するなどすれば、双方ともに来場してくれやすいでしょう。
未来予測
テクノロジーの進化により、様々なデバイスの製造コストは、ドンドン下がっていきます。
そして、AR・MRデバイスの製造コストも、いずれ かなり安くなるでしょう。
すると、特定のエリアのみで使用できる、廉価版のスマートグラスなどを製造依頼して、リアル現地で無料で配布…という戦略も可能になります。
(大量発注することを条件に、低予算で受けてくれる企業と提携…など。)
もちろん、製造コストが下がったからと言って、廉価版スマートグラスを大量に無料配布したら、かなりの費用はかかります。
(なので、”ウォレット保有”を条件にする…など、ある程度の行動を起こしている人のみに限定してAR・MRデバイス無料配布…でも良い。)
しかし、これは”広告費”として考えることができます。
なぜなら、”革新的な地方創生”として、各種メディアに情報拡散してもらえる可能性が高いからです。
また、現地でスマートグラスを無料で受け取り、AR・MRを体感できる…というのは、現地に来てくれた人によるSNS情報拡散も狙えます。
地方創生のために自治体が、莫大な広告費を投じる…というのはとうぜんですが、その広告費をAR・MRデバイス無料配布に使うのです。
(そこに表示する広告枠などを、地元企業向けに販売…などすれば、ある程度は回収できるでしょう。)
地方創生の”先進事例”として有名になれば、その後の地方創生活動も注目されやすく、情報拡散もされやすくなります。
また、
定期的に「NFT・独自トークンを得る権利」をプレゼント(期間内に使わないと権利が消滅)などをすれば、リピーター化してくれやすくなります。
・・・これらは、現時点での未来予測です。
これからもメタバースを土台とした文化は、ドンドンと新しく生まれてくるでしょう。
そうすれば、さらに戦略の幅は広がります。
自治体などは頭のカタいイメージがありますが、ピンキリです。
柔軟な発想を持って時代の流れに敏感で、先進的な取り組みをする自治体もいれば、
イメージそのままに頭がカタく固定観念にガッチガチに縛られた自治体もいるのです。
メタバース・ブロックチェーン技術によって、”国”という概念の存在感が薄れていく中、
国を細分化した単位である”地方自治体”が、メタバース・ブロックチェーン技術を活用して存在感を高めていく・・・。
このパラドックス、なんだかワクワクしてきますね。
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